第12回 パーマカルチャーに「日本の美」、デザイナーのセシリアさん

タスマニア州で1970年代に誕生した理論「パーマカルチャー(Permaculture)」。自然が持つ力を生かしながら、持続可能な農業や生活スタイルを作り出す「究極のシンプルライフ」として日本でも知られるようになってきた。パーマカルチャーの指導者で、日本でも教鞭(きょうべん)をとるセシリア・マッコーリー(Cecilia Macaulay)さんに話を聞いた。

パーマカルチャーとは、パーマネント(永久)とアグリカルチャー(農業)、そしてカルチャー(文化)を組み合わせた造語。伝統的な農法から学び、化学肥料などで自然を痛めることなく、本来の生産力を引き出して、持続可能な生活環境を作り出そうとする考え方だ。パーマカルチャーのキーワードは「デザイン」。農作物や家畜のみならず、水やエネルギー、住む人の生活の質、そして地域コミュニティーなど、生活のすべてを調和させる「良いデザイン」を見つけ、互いを補完し合うシステムを作る取り組みでもある。

セシリアさんの肩書はパーマカルチャー・デザイナー。農場はもちろん、依頼者の住居やライフスタイルのデザインも手掛ける。都会であるシドニーで力を入れているのは台所のデザインで、「台所から人生は変わる」と断言する。孤独で偏った食生活が、病気はもちろん、多くの問題の根源になっていると考えているからだ。パーマカルチャーでは、生活する人の労力も資源の一つと考えるため、効率化の手法「ゾーン分け」を活用して台所をデザインし直し、エネルギーが無駄なく流れるようにする。料理が苦手、または忙し過ぎるという人には、家族や同居人、隣人など周りをまきこんで力を借りるよう助言する。自然のつながりであるエコシステムを人間関係にも応用し、個人が孤立することなく助け合える環境を作れるという。

「自然(周り)に無理を強いず、自分も無理をしない」ことが大切な軸。セシリアさんはかつて、環境保全活動に身を投じた時期もあったが、守ろうとする対象が大き過ぎて無力感を感じることが多かった。しかし台所のデザインの仕事は、目に見える形で個人や家族の人生に良い変化を与えることができ、励みになるという。

■訪日、数え切れず

セシリアさんがパーマカルチャーを知ったのは、若いころ世界旅行中に出会った男性がきっかけだ。セシリアさんがオーストラリア出身であることを知ったこの男性が「パーマカルチャーが生まれた特別な国だ」と驚いたことで、パーマカルチャーとは何だろうと興味を持ったという。その後英国などでパーマカルチャーの農場や庭園作りに携わり、一生の仕事にしようと決めた。

パーマカルチャーの農場では、何を栽培するかはその土地が決める。自然の声を聞き「最小限のものから最大限のものを生み出す」日本の文化、日本の伝統農業にはパーマカルチャーと通じる部分が多いという。訪日回数は数え切れず、過去22年間は少なくとも年1回、日本を訪れているそうだ。東京を中心に日本各地でパーマカルチャーを日本語で教えるほか、多摩美術大学でもデザインの授業で教鞭をとっている。

■自宅でワークショップも

「一つの通りに一人のパーマカルチャー・デザイナーがいる社会が理想」。将来の夢はパーマカルチャーの指導者を養成する学校を作ることだが、自分には管理能力が欠けているため「まずは学校を運営できる人を見つけないと」とセシリアさんは笑う。短期的には、シドニーの自宅でパーマカルチャーの一日ワークショップを隔月開催する計画。内容はパーマカルチャーに基づいた自宅のデザインや、農業入門などで、基本は英語だが、参加人数がそろえば日本語でも開催可能だ。詳細はHP(http://www.ceciliamacaulay.com.au/)参照。

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