湖城の窓から「沈黙の酪農加工業界」

オーストラリアの酪農業界は7月に新シーズンが始まります。例年6月第1営業日までに乳加工会社が新シーズン向けの牛乳の買取価格(生産者乳価)を提示し、その後1カ月かけて酪農家と協議したり、他社の動向を見て乳価を調整したりします。昨年までは5月中盤には各社が乳価を提示していたのですが、今年は5月29日現在でも、ほとんどの加工会社が沈黙を守っています。

それもそのはず、昨年までオーストラリアの牛乳生産量は減少傾向にあり、加工会社は早めに高い金額を提示し、少しでも多くの牛乳を確保すべく動いていました。一方で今年は、先週号のトップ記事で触れたように、生産量は増加する見込みです。供給が増えることで、業界は新シーズンの乳価は下落を織り込んでいるとみられます。

しかし酪農家は、牛乳の生産増加は乳価引き下げの理由にはならないと主張しています。その理由として、直近での海外市場の需要の上昇を挙げています。隣国ニュージーランドでは最大手フォンテラが29日、新シーズンの乳価の引き上げを発表しました。

ここ1年、オーストラリアの乳製品価格は他国に比べ高く、乳加工各社は競争力の低下に苦しんできました。新年度は乳価を下げて利益率を引き上げたいというのが本音でしょう。

オーストラリアの酪農家はこの週末、熟考の2日間になりそうです。(編集長)

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