もう来ないシリーズ(タイ料理編)
泊まったモーテルの近所でタイ料理の看板を見つけた。周囲にはガソリンスタンドしかない。ついついドアを押してしまった。
店内は暗く、エキゾチックなインテリア。レストランとしては過剰なほど強くお香が漂っていた。週末の夜とあって、テーブルには若いカップルの姿が多い。当方はレジに直行し、ベジタリアン・バジル炒めとライスのテイクアウトを注文する。
虚空を見つめながら待つこと5分。「34豪ドル(1豪ドル=約91円)です」と女性店員。え、え、え、ちょっと高いのでは。あわてて確認してもらうと、計算ミスで、23豪ドルだった。ホッ。
モーテルの部屋に戻り、テーブルの真ん中にプラスチック容器を置いた。ふたを取ると、1センチ角に切った豆腐が5つとカリフラワー、サヤエンドウ、ブロッコリー、ニンジンの薄片が白々と蛍光灯に照らされていた。これで2000円か。この店にはもう……。あ、ここは遠いから、そもそももう来ることはないはず。(短吉)
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