異国の果物
異国にいると、日本では食べる機会のない果物にありつけるのが魅力のひとつ。ここオーストラリアでもいくつか初めて食べる果物に出会ったが、最近良かったのはブラッドオレンジだ。
先日家人が買ったようで食卓に置いてあったのだが、果肉の色が赤く変色していたので、腐ったオレンジだと思ったものだ。まさに血のように果肉全体が均一に赤いというならまだしも、一部が赤く染めたようになっているので、いかにも食欲がそそらない奇妙な風采だ。ところが、食べてみると実においしく、その直後に食べた普通のオレンジが陳腐な味に思われてしまうほどだった。
反対に、日本ではよく知られたデコポンがオーストラリアで初めて登場したことは本誌でも紹介した。名も知らぬ果物が異国にいって消費される。それはそれで喜ばしいものだが、異国の食物への神秘性がまた一枚はがされていく、ということはなんとなく寂しくもある。(西嵐)
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