湖城の窓から「箱入り農家」
日本で離農する酪農家が増加しているというニュースが報じられています。世界的な飼料価格の高騰や、新型コロナウイルス関連の消費低迷からの回復遅れにより、休廃業や倒産する酪農家が過去10年間で最多となっている状況です。
某紙は、飼料代の補助や生乳出荷価格の引き上げなど、農家に対する政府の支援を今こそ手厚くすべきと訴えています。しかしオーストラリアに身を置いていると、この論調には違和感を覚えます。
飼料コストの高騰や消費低迷はオーストラリアでもしばらく前に発生していました。しかし政府に対し農家を支援すべきという声は聞こえません。政府がすべきなのは、生産環境の整備や公正な競争が行われる市場を整えることとされます。今回の予算案でも、政府は伝染病の侵入防止や人手不足問題を解決する動きをしていますが、生産コストの支援などは行いません。2020年に酪農業界に導入された業界規制(行動規範)も、取引を公正にするルール決めで、出荷価格の引き上げが目的ではありません。実際にオーストラリアでは、06/07年に8,000軒を超えていた酪農家は20/21年度に4,618軒と半数近くになり、生乳生産量も右肩下がりです。それでも政府・業界は、市場の競争に任せるという態度を崩しません。
以前こちらで取材した農家が、オーストラリアの農家は日本の農家のように政府や業界団体に守られておらず厳しいと述べていました。しかし同時に、日本のやり方では農家の可能性が広がらないとも指摘しています。(編集長)
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