第42回 アクティブな食育の授業(上 )

「この菜園で育てられている野菜は何だか分かる人~?」「カボチャ!」「トマト!」「キュウリ?」活発的な会話が飛び交っているのは、シドニーのボンダイにある小学校の食育の授業。食育事業を展開する「ステファニー・アレクサンダー・キッチンガーデン・ファウンデーション」のモデル校として指定されている小学校を見学させてもらった。

週に1回ずつ、菜園での作業と調理場での実習が行われる。小学3年生のほかに、地域住民のボランティアが3人参加している。1グループ5~6人の児童にボランティアが1人付く。何十人もの児童がいる中、1人がやっているのを見ているだけでは、飽きてくる児童も出てくる。それに配慮し、少人数制が取られている。

菜園での作業は、ただ単に野菜作りをするだけではない。先生がいきなり、「これから農家がどうやってお金を稼ぐかを実践します」と言った時には驚いた。菜園の作業をほかの授業で習っていることと結びつけているためだ。


これも小さな工夫という。例えば、菜園で育っている野菜の個数を数えたり、菜園のブロックの長さを測ったりすることで算数を使う。そうすれば、ほかの授業のテストでも「あの時食育の授業で習ったな」と思い出したりと、学びをもっと楽しいものにできるという。

「ステファニー・アレクサンダー・キッチン・ガーデン・ファウンデーション」は、2001年にメルボルンで始まった。最大の目的は「子どもに食事を楽しんでもらうこと」。自分で野菜を育てると、今まで食わず嫌いだった食材を食べるようになる児童が多い。「健康的だから食べなさい」ということなどは一切教えないが、それにつながるものがあるという。このファウンデーションの事業の補助金が、農林水産省ではなく、保健高齢省から出ていることからも伺える。

同ファウンデーションが推薦しているのは、小学校3~6年生を対象にした食育の授業だ。味覚が決まらない時期に菜園で自分なりに育ててみる。そういう体験をした児童は、一生のライフスキルを身に付けることができるというわけだ。(次週に続く)

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