湖城の窓から「アグリテックのタネ」

オーストラリアはバイオセキュリティーに厳格なことは有名で、国境はおろか州境でも持ち込み品の検査が行われるほどです。あまりの厳格さで観光客などには不評なものの、今回、その重要性と限界を改めて認識させる出来事が発生しました。

昨年8月、南オーストラリア州でトマト病害「ToBRFV」が確認され、同州は隔離などの検疫対策を実施しました。

しかし同年末に許可なくトマト苗が移動されたことが発覚し、それが原因でビクトリア(VIC)州にもウイルスが拡散。同州ゴールバーンバレーに感染が広がり、当該農場は閉鎖され120人以上の労働者が職を失う事態となりました。

ToBRFVは、トマトやパプリカ、チリなどの生産量を最大70%減少させる恐れがあります。今回の件ではオーストラリア連邦と州政府は当初、500万豪ドル(約5億円)規模の対応策を実施しましたが、規制が守られず、結果的に両州で経済損失を招いた形です。

VIC州農業連盟は従来、「バイオセキュリティーは農業の生命線であり、脅威には迅速に対応しなければならない」と警鐘を鳴らしていました。しかし厳格な規制を敷いていても、感染症が拡大する場合があることが明確になりました。規制をすり抜けた理由はまだ明らかになっていませんが、人為的ミスやルール違反の可能性も高そうです。この分野、今週のトップ記事で取り上げたアグリテックのシーズ(需要の種)があると思われます。(編集長)

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