【2024年重大ニュース】豪の牛肉輸出が過去最高に、牛群数は転換
オセアニアの畜産業界にとって2024年は、牛肉輸出が絶好調だった一方で、牛群が縮小に転じた節目の年となった。オーストラリア産牛肉輸出は米国の供給減少を背景に拡大し、年末には過去の記録を更新するとみられている。一方で20年の干ばつ終了以降、継続して増加してきた牛頭数は今年が転換点となり、少なくとも26年までは減り続けるとみられる。ニュージーランド(NZ)では農地転換などを背景に家畜が減少し、加工所の閉鎖もみられた。
オーストラリアの牛肉年間輸出量(暦年)は、11月までの累計が121万6,000トンで、前年同期比25%増を記録。過去最高だった14年の記録まで7万834トンに迫った。その後の食肉処理量も高水準で推移したこともあり、今年の輸出量は過去最高を更新する可能性が高いと期待されている。
輸出増加は米国の牛肉生産が縮小し、市場供給の穴をオーストラリア産が埋める形となったことが大きい。オーストラリア食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、米国の牛群数は24年初旬に8,720万頭と、1951年以来の最低水準を記録した。分析会社エピソード3のアナリストは、「米国で牛の放出が長期化していることを考えると、オーストラリアへのプラスの影響は少なくともあと2年は続く」との見方を示した。
その他の輸出増加の要因は、飼育期間の長期化や雌牛の減少で枝肉重量が中期的に増加傾向にあるほか、◆国内市場向けの置換◆南部地域の高水準な解体数◆在庫のキャリーオーバー◆為替動向――などが指摘された。
■牛群数は4年ぶり縮小
一方でMLAは9月、23/24年度のオーストラリアの牛群数を3,017万頭とし、前年度から1.4%減少するとのリポートを発表した。第3四半期(7-9月)には牛の解体数が224万1,200頭で、15年9月以来で最多となるなど、牛肉の生産増加が背景だ。オーストラリア産への需要が堅実だったことや過去数年間にわたり牛群再構築が継続したことが解体増加の理由となった。同様のペースで進行した場合、今年の年間解体頭数は、雨不足で解体が急増した19年以来の高水準となる818万頭に達する見込みだ。
MLAは、「放牧場(パドック)の容量率が高くなり、生産者は高齢の繁殖牛を解体処分している」との見方を示した。
■日本でLSD初確認、輸出停止で混乱も
また、12月には中国政府が、輸入を差し止めていたオーストラリアの食肉処理施設2カ所について輸入の再開を承認した。中国は20年以降、オーストラリアの食肉処理施設合わせて10カ所からの輸入を停止していたが、今回の決定を受け国内の全施設で禁輸が解除された。
一方日本では11月に、九州の農場で牛の病気のランピースキン病(LSD)発生が初めて確認された。オーストラリア向けの牛肉輸出が停止され、飲食業界は混乱した。両国当局間の交渉を経て、約2週間後に大半の商品で輸出は再開されたものの、オーストラリアでは、日本でLSDが確認されたことで、牛のウイルス性疾患に対するメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンへの投資が促されるとの見方も示された。
■NZは加工場閉鎖も
NZでは、6月時点の牛群数は355万頭と、前年から2.8%減少した。NZでは過去数年にわたり、畜産農地が林業地に転換されることで、家畜頭数が減少する傾向が続いていた。これに加え、今年は国内の一部地域での乾燥の影響も大きく、畜産団体ビーフ+ラムNZ(B+LNZ)によると干ばつが厳しかった南島で牛は7.1%減少した。気候が比較的穏やかだった北島は0.8%減少にとどまった。
また、羊の頭数は2,331万頭で前年から4.3%減少した。業界に与えた影響は大きく、食肉加工協同組合アライアンス・グループは、南島ティマルーにあるスミスフィールド工場(従業員数約600人)を、年内に閉鎖する方針を決定した。「土地利用の変化により羊の加工頭数が減った」ことを理由とした。
B+LNZは、「多くの生産者は干ばつのせいだけでなく、キャッシュフローの理由でも、家畜資産を売却せざるを得ない。このことは今年の収入に影響するばかりか、将来の収益性にも長期的な影響を与える」と指摘した。
NZ食肉産業労組は、家畜数の減少を受けて、今後も運営が続けられない加工場が出てくるとの見方を示した。
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