オセアニア農業の歩み「抹茶ブームの行方」

オーストラリアのショッピングセンターや一般のカフェでも抹茶ドリンクを見かける機会が一段と増えています。抹茶いちごラテが定番化したかと思えば、マンゴーピューレやココナッツミルクを組み合わせた新メニューも次々と登場しています。こうした人気の高まりに合わせ、飲食業界向け展示会「ファインフード・オーストラリア」や日本の食材・文化を紹介する「ジャパンエキスポ」でも、日本企業が自社産地の抹茶を積極的にアピールする姿が目立っています。

日本の農林水産省によると、2024年の抹茶輸出量は前年比25%増と急伸しました。23年に0.8万トンだった輸出量を30年に1.5万トンへ倍増させる政府目標も達成が視野に入っています。

一方で、需要の急増は生産地に課題も投げかけています。京都・宇治の一部の農園では、今年猛暑で収量が最大25%減少し、石臼挽きを基本とする伝統的製法では供給を一気に増やすことが難しい状況です。

こうした供給の逼迫を背景に、中国では貴州省銅仁市を中心に大規模な抹茶生産が進み、日本の技術者を招いて品質向上を図りながら生産体制を強化しています。中国全体の生産量は25年に5,000トンを超える見通しです。

オーストラリアのカフェ文化の中で存在感を増す抹茶ですが、供給体制の再編も進んでいます。今後の抹茶ブームがどの方向へ向かうのか、その動向を引き続き注視したいと思います。(本田歩)

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ウェルス編集部

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