オセアニア農業の歩み「ヘルス・スターは誰の利益に?」

今週は、加工度の高い「超加工食品」が健康に悪影響を及ぼしているという指摘や、広告・販売規制を求める声について取り上げました。オーストラリア人が日常的に口にする食品の約半分が超加工食品に分類される現状は、それがいかに身近な存在になっているかを物語っています。

一方で、巨大企業の政治的影響力の強さを踏まえると、規制の実現は容易ではありません。コカ・コーラ、ペプシコ、モンデリーズの大手飲料・食品メーカー3社だけで、世界全体で年間135億豪ドル(1豪ドル=約101円)もの広告費を投じているとされ、この額は世界保健機関(WHO)の年間運営予算の4倍に相当します。

オーストラリアでは、食品の健康度合いを星の数で示す「ヘルス・スター・レーティング(HSR)」制度にも批判が相次いでいます。加工度や人工甘味料を評価に反映しないアルゴリズムを採用している上、表示が義務ではないため、高い評価を得られる製品ほど「宣伝目的」で選んで表示されやすいという問題が指摘されています。

制度の普及率は近年停滞しており、昨年11月時点でHSRを表示していたのは対象製品の35%にとどまり、前年の32%からわずかに増えただけでした。オーストラリア医師会のレイト副会長は、「HSRを業界のためではなく、消費者の利益とするためには制度の義務化が必要だ」と強調しています。制度が誰のためにあるのかが問われています。(本田歩)

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ウェルス編集部

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