国籍と料理
オーストラリアに来たばかりの頃、イタリア人家庭にホームステイしていた。イタリアといえばパスタやピザといった食のイメージがあり、美味しいご飯が食べられることを期待していた。イタリア人家庭なら料理は安心だ、と友人らとも話していた。
しかし、よく出てきたのはプラスチック皿に盛られた豆だけのパスタ。食欲が湧くものではなく、豆の素朴な味だけだ。ホストマザーは栄養があり美味しいと言いながら食べていたが、取れる栄養はタンパク質と繊維、炭水化物くらいではなかろうか。結局最後まで種類は違えど、味のレパートリーは少ないパスタ生活を送ったものだ。
毎日食事を用意してくれたことには感謝したが、やはりディナーを前にすると栄養の考えられた日本食の素晴らしさを感じた。そして毎日違う料理を作っていてくれた我が母への感謝の気持ちが沸き上がり、もう二度と母の料理に文句は言わないと決めたものだった。あれからウン十年、本当に料理に文句を言わなかったかどうか、心もとない。(奈歩)
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