湖城の窓から「水際の戦い」

畜産業界団体「キャトル・オーストラリア(Cattle Australia)」は先月、同団体初となる業界カンファレンス「キャトル・コネクト」をオーストラリア・ニューサウスウェールズ州で開催しました。専門家や生産者を招き、業界の課題について議論するこのイベントには、約500人が参加しました。議論のテーマは、世界的な牛肉需要の動向から再生可能エネルギーへの移行まで多岐にわたりましたが、特に注目を集めたのはバイオセキュリティーの問題でした。

先月、日本で初めてランピースキン病が確認されたことが、オーストラリアの危機感をあおっているようです。ランピースキン病や口蹄疫(こうていえき)は、オーストラリアの畜産業にとって重大な脅威です。これらの病気が国内で発生した場合、世界市場へのアクセスが一夜にして断たれることとなり、860億豪ドル規模の赤身肉産業が深刻な打撃を受ける恐れがあります。

生産者は、国境警備の強化を求めており、カンファレンスではバイオセキュリティー侵害に対し、「厳格な罰則を設け、抑止力とすべきだ」との意見が相次ぎました。現在の最高罰金額は6,260豪ドル(1豪ドル=約98円)ですが、これは国内の主要産業に対する脅威の重大さには不相応だとの指摘があります。また、近年では規則に従わない海外旅行者に加え、周辺海域での違法外国漁船の増加も問題となっており、畜産業界へのリスクはますます高まっています。(編集長代理)

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