湖城の窓から「気象庁が失った信頼」

オーストラリア気象庁(BOM)が連邦議会で批判の的になっています。

現在のBOMの年間運用コストは5億1,500万豪ドル(1豪ドル=約100円)。過去3年間で3割以上増加しました。それに加え同庁は、10年越しで観測システムやコンピューターの更新プロジェクトを実施中。そのコストは8億6,600万豪ドルと見積もられています。しかしこの国の常というべきか、すでに支出は7,800万豪ドル超過しています。

BOMは、「新型の気象レーダーや自動気球発射装置、上層大気観測装置が完成し、計画の9割が完了した」と報告していますが、影の環境相のダニアム議員(自由党)は疑念を隠しません。「BOMの財政管理は失敗」と指摘した上で、「夜間に全国をカバーしている予報士はたった4人」と暴露。「農家は彼らが自分の地域に集中していないかもしれないのに、どうして朝の予報に自信を持てるのか」と批判しました。

実際にBOMは昨年、エルニーニョ現象の予報をしていましたが、その予想は見事に外れ、乾燥に備えて家畜在庫を放出した畜産農家は多額の損失を被りました。BOMへの信頼は失墜し、民間の気象予報会社に対する需要も強まりました。

ダニアム氏は「農業など天候に左右される産業が精度の高い予報を利用できるよう、気象庁は適切な投資判断を行う必要がある」とあらためて強く要請しました。

失った信頼は、簡単には取り戻せそうもありません。(編集長)

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