湖城の窓から「農と政の対立」

オーストラリアの農業生産者ら約1,000人が今月10日、キャンベラの国会議事堂前に集結し、連邦政府に対する抗議デモを行いました。政府に対し「イデオロギー的政策を止めよ」と訴えています。どういうことでしょうか。

対立のきっかけは、労働党率いる現政権が今年5月、生体羊の海上輸出を2028年に禁止すると決定したことです。これに生産者は「政府は動物愛護や環境保護の活動家寄りだ」と反発。最初の抗議活動は、生体羊の輸出が盛んな西オーストラリア(WA)州で起きました。

その後新たに就任したコリンズ農相は、WA州を訪問し説得に努めるものの逆効果。農業界は態度を硬化させ、「連邦政府の政策は科学的根拠に基づかず、イデオロギーによって決定される例が増えている」(全国農業者連盟)として、今回の大規模デモの対象は、生体羊問題にとどまらず、温室効果ガス排出量報告の義務化やバイオセキュリティー税導入、エネルギー問題などに拡大しています。

今のところ妥協する様相のない農業界に政府はどう対応するのでしょうか。労働党は13年前にも生体牛の禁輸を強行した経緯があります。当時は農業界の猛反発を受け、わずか4週間後に禁止を撤廃しています。

オーストラリアでは、来年5月までに総選挙が実施される予定です。デモを主催した全国農業者連盟は、「現状のままでは選挙は労働党の思う通りにはならない」としています。(編集長)

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